山からみた景色No.01「雲取山」<後編>厳冬期登山[東京]
日帰り/電車バス/都心から2時間半/ 鴨沢〜七ツ石山〜雲取山〜三条の湯〜お祭/ "平将門 迷走ルート"
by Fujita Minori
2025.02.24
七ツ石山からは景色が一望できて、目指すべき雲取山山頂を確認しました。
ここからは山の稜線を歩きます。
登り始めて初めての下り。新鮮な雪を踏んで、見晴らしもいいので気持ちが良いです。
しかしスピードに乗った下りは特に足元に注意が必要になります。雪は地面を不明瞭にするので尚更です。
さらに一段階雪が深まり、しばらく歩くと靴裏に雪が溜まってしまうので、何度も取り除きました。
反射光がきつくてサングラスも必須です。
総じて雪はストレスが多いですね。
平将門迷走ルートその十、「大血川の悲劇」
逃亡の日々で食べるものもなくなり、心身の疲れから、九十九人のお妃達が一斉に自害してしまった。その血は七日七晩にわたり川を赤く染め、抜け落ちた髪の毛は川海苔に化身したという。このことからそこを大血川と呼ぶようになったそう。
この悲しいお話で将門の物語は終わっています。なんとも悲しくてやりきれない感じです。
稜線は上ったり下ったりを繰り返します。
途中に幹が大きく曲がり、体をくねらせたような姿からダンシングツリーと名付けられた杉があります。
他にもヘリポートや、鹿よけのゲートなどもありました。
やがて、緩やかな道になりました。素晴らしい景観です。(サムネイル画像)
残念ながら富士山は確認できませんでした。
もう山頂は目と鼻の先です。
ようやくたどり着きました。雲取山の山頂です。
さすがに良い気分です。
ここまでほぼ休憩なしで来たので少々くたびれました。
おにぎりがうまい。
下から風が吹き上ってきて体が冷えそうなので早めに切り上げます。
帰りは三条ダルミの方へ。
鴨沢ルート比べ、かなり勾配がきつくて、細かいつづら折りの登山道になります。
高勾配×下り×雪。この組み合わせは大分厄介です。
何度か足を滑らせました。膝や足にかかる負担も大きい。
登山は下りが辛いとはよく言いますが、まさにその通り。登りは体力を使いますが、下りは足をすり減らします。
三条ダルミを抜けると今度は緩やかな下りの斜面沿いの細道に出ます。
ここは本当に誰一人いなくて(下りの工程全体を通しても一人もすれ違いませんでしたが)
鹿が鳴いてじっとこちらを見つめています。寂しさというか、日が暮れていくのもあって、ちょっとした怖さがありました。
それから、道が本当に細いところがいくつもあり、トレースを追う必要がありました。こんな道でもちゃんと先人がいるのだからすごいです。もしかしたら初めの道は鹿や猪が切り開くのではなんて考えました。
かなり下り、雪がなくなると、今度は落ち葉がかなり深く積もっていて、道は相変わらず細いままなので気が抜けません。
延々と続く下りから、足の疲労感が溜まっていきました。
一度道をロストしました。
少し上りがありまして、かなり疲れていたことから、早く下りたい一心で降りてしまった場所がルート外で、急斜面だったので数メートルほど滑ってしまいました。
相当焦りました。
いったん道を見失うと困惑してしまい、不安感に包まれます。
周囲には全く道がないのに、あらゆる所が道のようにも見えてきます。こっちかもしれない。とりあえず安心したくて道を見出そうとしてしまうのでしょう。でもそれはただの斜面で、どうにも違う。
しかしこの、こんな危険なはずがないだろうという感覚は安全な都市で生きてきた人間の弱さ甘さみたいなもので、新たな道を開拓する登山家や動物たちからすればこれが日常であるということが驚きでした。
こんな発見はよそに、現実は正しいルートに戻るしかない。とりあえず地図の高低差を頼りに方角を推測し、下りてきたと思われる方へとにかく登って元の道を探しました。明らかに急すぎる斜面。これが本来の山。厳しい自然。普段登っている道は天国だと思えました。
しばらくすると道らしいところに出て、ピンクのリボンを見つけました。この時の安心感といったら!
本当に良かったです。
それにしてもこのリボンは誰がつけているのでしょうか。ありがたいものです。
↓遭難未遂地点
そこからも先も崩れた道に何度も遭遇しました。特に三条の湯付近が酷かったです。
このルートは本当に推奨しません。
やっとの思いで三条の湯の看板を発見したのでした。
近くの渓流には大きなつららがあり、テンションが上がりました。
まさに秘境の佇の三条の湯。私の期待は最高潮に達していました。
トタン屋根に、趣のあるL字煙突。壁際に薪が積まれていて、なんとなく懐かしくなるような山小屋。良い雰囲気です。
食堂は暗く、椅子が上げられている。食堂はやっていないようです。
受付には「外作業のため不在にしています しばらくお待ちください」のボード。
小さな不安がよぎります。
ああ、さっきトイレを清掃していた人かなと思い、手前にあったベルを鳴らす。聞こえていないようなので直接呼ぶ。反応がない。また呼ぶ。反応はない。仕方ないから座って待つ。
10分ほどしてその人がトイレから出て来る。ずいぶん待った気がした。
特に急ぐ様子もなく、ブラシとモップを洗って干し、全て終えてからこちらにゆっくりと歩いてくる。
青いつなぎを着て、長髪に無精ひげの、まだ30歳くらいの男。
ピクリともしない無表情で喋る。
「なにか用ですか。」
ここはアフリカか!?アフリカンタイムか?
ツッコみたいのをこらえて入浴を希望すると、
「今日明日は休みなんですよ。」
!?!?!?!?
マジかよ!
マジかよ。
どうしようもなく、そうですかと言って通り過ぎた。
近くにあった丸太椅子に腰かけて呆然とする。ここまでの希望だった光が消された。
こういう土地にある施設は不定休だから事前に調べるべきなのだ。ネット情報のみでなく、電話で、確実に。私の落ち度だ。
でも、よりにもよって、今日休まなくってもいいじゃないか。ぶつけようのない不満が心を支配する。
しかしこうなってしまってはしょうがない。一刻も早く下山して他の温泉へ行こうと考えた。ここで気が付く。終バスの時刻は調べたがその一本前はいつだろうか。
ここは圏外。調べることはできない。記憶では一日4本。だとしたら早めに降りたところで結局待つ羽目になるのでは。いや、一日6本だった気もする。それならば一本前に乗れるはずだ。こんなところでぐずぐずしていたってなんにもならない。ともかく歩こう。
これが間違いだった。いや、そもそも調べておかなかったことが失敗なのだ。
景観の良い渓流沿いとはいえ単調な小石のロードを約10km。足が痛いのと、早く下りたくて一部走ったりもした。温泉ショックが相当こたえた。満身創痍だった。
その道路は駐車場もなく、三条の湯へ行くためにはおそらくこの道を、下から徒歩で来る他ない。キャンプサイトもあったが、一体どこの物好きがこの工程をキャンプ道具を担いで歩いてくるのか。分からん。
結果は先にお伝えした通り、バスは一日4本で、到底間に合わず、終バスまで2時間、極寒の待機地獄だった。
星がきれいだった。
真っ暗な道をバスが来た時は仏に救われた思いでした。
車内が温かくてほっとします。
奥多摩駅からほど近い、河辺駅の駅前にスーパー銭湯があったのでそこに決めました。
お腹も空いていたけど、それよりなにより熱い湯につかりたい。
極楽とは温泉と見つけたり。
生きてて良かった。
天国はきっとものすごく大きな温泉宿に違いありません。
その後、ご飯を食べそびれて、飯難民と化していた私。
諦めかけていたところに拾う神ありでした。拝島駅構内にそばがありました。
コロッケそば。機動k、、、。うまい。五臓六腑に染み渡る。
今回の登山は辛かったし課題がいくつも残りましたが、悪いことばかりじゃない。
やはりまた登りたいなと思ってしまうのでした。
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