浅草寺とスカイツリーのあいだで
隅田川のほとりで見つける、昔と今が混ざる街

東京・浅草の中心に静かに佇む浅草寺(せんそうじ)は、都内最古の寺院として知られている。 雷門の大提灯をくぐれば、そこには現代とは少し違う時間が流れている。
喧騒の中にも不思議と落ち着いた空気があり、地元の人々も外国からの観光客も分け隔てなくその空気に包まれる。 私は浅草の周辺に住んでいるのだけれど、夜に歩くことが多くて、観光客のいない風景もよく浮かぶ。そこまで歩くと、いつも静謐な雰囲気と空気感、完璧なライトアップと、本堂の造形に見惚れる。 浅草寺の起源は、飛鳥時代にまでさかのぼる。 628年、隅田川で漁をしていた兄弟が引き上げた一体の小さな観音像。これが浅草寺の御本尊である聖観世音菩薩であると言われている。人々の信仰を集め、やがて一つの寺が建てられ、今日に至るまで幾度となく戦火や災害を乗り越えてきた。 戦後の混乱期にも再建され、人々の心の拠り所となった浅草寺。その姿は、単なる観光地以上の存在であり、東京という大都市の中で、日本の「祈り」の形を今に伝えている。
仲見世通りを抜けると見える本堂には、毎日のように多くの参拝者が訪れる。線香の煙が揺れ、手を合わせる人々の表情にはそれぞれの物語が滲む。お願いごと、感謝、祈り――人が人であることを思い出させるような、静かな交流がそこにはある。 また、浅草寺の周辺には、下町文化が今も色濃く残っている。老舗の和菓子屋や人力車、芸者文化など、江戸の情緒を感じさせる風景が広がっている。歴史と現代が同居するその場所は、日本という国の時間の流れを体感させてくれる。 浅草寺はただの寺院ではない。東京の記憶を背負いながら、訪れる人の心にそっと寄り添うような、不思議な温かさがある場所だ。
浅草寺を後にして、ふと見上げれば、空の向こうに東京スカイツリーが見える。 本堂から東に歩けば、言問通りを越えて、隅田公園へと出る。そのまま川沿いを南に下れば、スカイツリーが少しずつ大きくなっていく。 2012年の5月に名付けられた、展望台を持つ大きな電波塔。東京都内をはじめ関東全域のテレビ・ラジオの電波を送信する電波塔。 歴史と未来が一直線に繋がって見えるこの瞬間が、私は好きだ。
かつて舟が行き交ったこの隅田川も、今では観光船がゆっくりと水面をなぞっていく。隅田川沿いにはベンチが複数設置されている。ここで何もせず、ただお酒を飲む。そんな時間が、とても心地いい。 遠くには新しいランドマーク。足元には古い江戸。その対比が、まるで「時間」を見ているようで、ちょっと感傷的になる。
桜が緑になるころ、隅田川から夏に思いをはせる。いくつもの香りがこの付近を照らしている。 季節がめぐっても、あの瓦屋根の曲線と、川沿いの風だけは、きっと変わらない。